メソポア珪藻土は珪藻化石が地質的変質作用によって変化し、虫の玉子状或いはマリモ状の粒子から成っている(SEM写真左)。この粒子の大きさは1㎛前後であり、メソポアはこの粒子を構成する微粒子とその間隙に形成されている。
従って、このマリモ状粒子が破壊され、メソポアの直径以下の大きさ、すなわち、ナノ粒子に粉砕されない限りメソポアが消失することはない。たとえ、その大きさに粉砕されても、それらが凝集する二次粒子の粒子間隙がメソポアを形成するため、粉砕によってメソポアの機能が消失することはないと考えている。
典型的な稚内層メソポア珪藻土の粉砕・分級試料の吸放湿特性を表に示した。ボールミルで湿式粉砕し、200M(75㎛)フルイ通過物を試料とし、水ひ分級によって粒度別試料を作製した。
SP.NO |
水ひ・分級法 |
50%RH
吸湿率(wt.%) |
90%RH 吸湿率(wt.%) |
吸放湿機能
(wt.%) |
1 |
0.5hr水ひ沈殿物 |
4.71 |
18.38 |
13.67 |
2 |
0.5hr水ひ物 |
4.25 |
18.37 |
14.12 |
3 | 2hr水ひ物 | 4.32 | 18.92 | 14.60 |
4 | 5hr水ひ物 | 5.07 | 19.82 | 14.75 |
5 | 22hr水ひ物 | 5.57 | 20.85 | 15.28 |
6 | 74hr水ひ物 | 5.28 | 20.50 | 15.22 |
粒度は測定していないが、水ひ・分級法との関係からSP.NOの大きい順に小さい。また、相対湿度50と90%の間で吸放湿する細孔の大きさは、直径約4~20nmである。
この実測例から、メソポア珪藻土粉砕物の粒度と吸放湿特性との関係を見ると、粒度が小さいほど吸放湿機能が大きくなる傾向を示している。このことは、メソポア珪藻土のメソポアは、ボールミルでいくら細かく粉砕しても消失しないであろうことを示唆するものとなっている。
メソポア珪藻土の粉砕・分級法と機能との関係については、極めて重要な技術的課題であり、これまでも産地別、岩質・岩相別に調査・研究しているが、特別顕著な差異は見られない。それは、SEM写真によって十分説明できるのではないかと考えている。
ただ、マクロポアタイプについては別である。例えば、大分産も然りであるが、微細部の方が高機能であり、その差異も著しい。それは、珪藻化石のシリカ(SiO₂)がメソポアを形成しながら結晶化する初期段階にあり、その結晶が十分成長していないことに起因すると考えている。