合同会社シリカマテリアル
高田 忠彦
内装材は建物の一部材に過ぎないが、その使用面積が広い為に室内の空気質に及ぼす影響が非常に大きい。この自明の理は、皮肉にも建物の高気密化が進む中で明らかにされることになった。そして内装材が備えるべき要素として、意匠性のみならず住環境材料としての特性と機能が求められることになった。
自然素材であり、多孔質の機能を備える珪藻土内装材の役割の本質はここにある。
珪藻土内装材のような多孔質材料の調湿・脱臭などの機能はその細孔構造(細孔分布、細孔の形状など)に支配される。そして細孔構造は使用する珪藻土の種類と配合比、結合材や硬化剤の種類と配合量に決定付けられる。
従って、珪藻土内装材を住環境材料として高機能化するためには、高機能珪藻土をできるだけ多く配合し、細孔が閉塞されないように結合・固化されることである。
全国各地に分布する多種多様な珪藻土の細孔構造は、産地と地層によって著しく異なり、マクロポアが卓越するものとメソポアが卓越するものに大別することができる。一般的な珪藻土は前者であり、調湿などの機能が高い珪藻土は後者である。
弊社の珪藻土内装材はメソポーラス珪藻土が50~100wt%と大きい。メソポアの容量が大きく、その機能を100%発揮するため、住環境材料としての特性を備えている。
室内で発生する悪臭、不快臭には、化学物質の刺激臭、食物の腐敗臭、カビ臭、トイレ臭、タバコ臭、体臭、ペット臭などがあり、その成分は分析できないほど多種多様であると言われている。室内から臭い成分を取り去る一般的な脱臭法は換気によって屋外に排出する換気法である。しかしビニールクロスの様に静電気を帯びやすい内装材の表面には臭い成分が付着、蓄積し、換気法だけでは解決できない。
このように換気による脱臭には限界があることから、珪藻土内装材のような多孔質材料に対する期待が大きくなっている。多孔質材料による脱臭は、細孔の機能による臭い成分の吸着である。
珪藻土内装材の脱臭機能を厳密に知るためには個々の臭い成分の吸着特性を調べる必要があるが、ホルムアルデヒドなど特定物質の吸着特性から推察する以外の現実的な方法はない。
メソポア珪藻土のホルムアルデヒド
などの飽和吸着量(mg/g)
ホルムアルデヒド |
トルエン |
キシレン |
76 |
100 |
65 |
メソポア珪藻土の揮発性化学物質の吸着機能は非常に大きく、ホルムアルデヒドの飽和吸着量は一般的珪藻土の2.4倍である。
珪藻土内装材が他の化学物質や臭い成分を同じように吸着するかどうかについては測定データがないが、使用するメソポア珪藻土の細孔構造と吸着特性及び揮発性物質の特性から推察し、優れた吸着・脱臭性能を有すると考えている。何よりも施工現場で体感によって得られている脱臭効果という事実がこのことを裏付けている。
ただ、細孔に吸着された揮発性物質は、室内の温湿度条件によってその一部は吸着・放散する。内装材の脱臭効果を高め、持続させる為には、呼吸する壁構造とし、外壁にも機能性材料を配置する工法で建て、室内から屋外へ壁体を通して排出するのが望ましい。
<参考資料>
メソポーラス自然素材を利用した調湿材の開発とその建築への応用
平成10年度 共同研究報告書「健康素材の開発による住環境改善に関する研究」
北海道立工業試験場、(株)シリックス、YKKアーキテクチュラルプロダクツ(株)
珪藻土建材の開発とその応用